この記事は宅建試験の勉強をするにあたり、次のような疑問をお持ちの方に向けて作成しました。
・宅建業でもらえる報酬ってどうやって決めるの?
今回は報酬の全体像について見ていき、次回に具体的にもらええる報酬額をケーススタディを通して解説していきます。
取引の形態で、その報酬額が異なってくるので混乱しやすいですが、もちろんいつ出題されてもおかしくないところなのでしっかり準備しましょう。
報酬額の全体像
報酬額がなんで業法で定められているのかは、法律の目的に立ち戻ればイメージできるでしょう。「消費者を保護する」、「流通の円滑化」のためです。
もし、法律に報酬額が定められていなかったら、「2000万の物件売ってきてやったぜ、そんなら報酬はその50%の1000万もらおうかの?」などがOKになっちゃいます。
不当に消費者が損することになってしましますし、そんなにボッタくられるなら物件を売らない方がましとなってしまい、結果、流通も滞ってしまいます。こういった状況を未然に防ぐために、業法で報酬額をしっかり決めてあるんですね。
不当に消費者が損することになってしましますし、そんなにボッタくられるなら物件を売らない方がましとなってしまい、結果、流通も滞ってしまいます。こういった状況を未然に防ぐために、業法で報酬額をしっかり決めてあるんですね。
報酬額は、業法の「取引」ごとに定められています。
取引の形態は覚えていますでしょうか?「売買・交換・賃貸」の「自ら・代理・媒介」(自ら賃借除く)ですよ。
報酬額についてのルールをざっくり全体像で表すとこんな感じです。
以下、それぞれの取引の形態ごと、詳しく見ていきます。
「売買」に関する報酬
売買に関する報酬額の上限は下の表のように決まってます。注意すべきは、基準となる売買価格は税抜きで計算しなければいけないこと。税金込みの場合の計算は次回のケーススタディでしっかりやりますのでご安心ください。
売買価格(税抜き価格) | 報酬の限度額 |
200万以下 | 売買価格 × 5% |
200万超 ~ 400万以下 | 売買価格 × 4% + 2万 |
400万超 | 売買価格 × 3% + 6万 |
この表の数字は何が何でも暗記です。これを覚えないとお話になりませんので、見ないで言えるまで繰り返し暗唱してください。
売買の媒介
媒介の場合、売主・買主の双方から依頼を受けて契約が成立すれば、報酬は両方から受け取れる。
例:業者が1000万円(税抜)の宅地を媒介して売る場合
表よりその報酬額の上限は(1000万円×3% + 6万円=36万円)
この36万円を上限とし、業者は売主・買主の両方から受け取れる。
表よりその報酬額の上限は(1000万円×3% + 6万円=36万円)
この36万円を上限とし、業者は売主・買主の両方から受け取れる。
つまり、業者は売主からMAX36万円、買主からMAX36万円の合計でMAX72万円まで受け取れるってことです。
売買の代理
代理の場合、双方代理は禁止されているので、売主か買主どちらかにしかつけない。この場合、業法は報酬額の上限の2倍までもらっていいことにしました。
例:業者が1000万円の宅地を売主を代理して売る場合
表より、その報酬額の上限は(1000万円×3% + 6万円=36万円)
この36万円の2倍を上限(72万円)として、業者は売主から受け取れる。
表より、その報酬額の上限は(1000万円×3% + 6万円=36万円)
この36万円の2倍を上限(72万円)として、業者は売主から受け取れる。
当然、買主とは代理契約をしていない(双方代理禁止で代理契約できない)ので、買主に報酬を請求することはできません。
空き家等の売買の媒介
国土交通省によると空き家の定義は次の通りです。
空き家
1年以上住んでいない、または使われていない家
1年以上住んでいない、または使われていない家
空き家は、使われている家より相場は安くなります。(立地しているところに依存するので一概には言えませんが・・・)
取引の相場が安くなるということは、もらえる報酬も安くなるってことです。そうなってしまうと業者としては「空き家なんかも儲からないから、取引せんわ!」となるのが自然です。
こういった問題を解決するため、業法では、400万円以下の空き家等の場合、通常の報酬額+現地調査等の費用を受け取ってもOKとしました。(ただし、報酬+調査費用の合計が18万円までを上限とする)
例:売買価格が300万円の空き家を媒介
表より、その報酬額の上限は(300万円×4% + 2万円=14万円)
報酬と調査費用の合計が18万円が上限なので、調査費用等を4万円まで受け取れる
表より、その報酬額の上限は(300万円×4% + 2万円=14万円)
報酬と調査費用の合計が18万円が上限なので、調査費用等を4万円まで受け取れる
現地調査等の費用をもらう旨はあらかじめ説明し、合意を得なければいけません。
だって、あとから、「調査費用いただきまーす」なんて言われても一般消費者はそんなルール知らないのが普通ですから「聞いてないよぉ~~」ってなりますもんね。
んで、この調査費用等を受け取るのは売主からです。
※空き家「等」なので、400万円以下の宅地建物であれば、この現地調査費用の特別ルールを使える。
空き家の売買の代理
代理の場合は先ほどと同様に、2倍を上限として受け取れる。ただし、現地調査等の費用については2倍はダメ。そのまま。(代理だからと言って、現地調査にかかるコストが2倍かかるわけではないからね)
例:売買価格が300万円の空き家を媒介
表より、その報酬額の上限は(300万円×4% + 2万円=14万円)×2倍の28万まで。
報酬と調査費用の合計が18万円が上限なので、調査費用等を4万円まで受け取れる(媒介と同じ)
表より、その報酬額の上限は(300万円×4% + 2万円=14万円)×2倍の28万まで。
報酬と調査費用の合計が18万円が上限なので、調査費用等を4万円まで受け取れる(媒介と同じ)
「交換」に関する報酬
交換の報酬については、その物件の価格で売買を成立させたものとみなすので、媒介の時と全く同じルールで扱います。報酬の基準となる価格は、交換した物件のうち高い方となるだけ。
「賃貸」に関する報酬
では賃貸についても、場合分けしてみていきます。
賃貸借の媒介
賃料の場合の報酬の限度は、貸主・借主の双方から受け取れる合計が家賃の1か月分まで。
例:家賃が10万円/月の物件を媒介する場合
家賃1か月分を上限として、貸主・借主から受け取ればいいので、貸主5万、借主5万でもいいし、貸主10万、借主0円でもいい(内訳に制限はない)
家賃1か月分を上限として、貸主・借主から受け取ればいいので、貸主5万、借主5万でもいいし、貸主10万、借主0円でもいい(内訳に制限はない)
賃貸借の代理
こちらは、双方代理の禁止があるので、依頼者のみからしか報酬を受け取れない。その上限は家賃1か月分。
例:家賃が10万円の物件を貸主を代理して貸す場合。
家賃1か月分を上限として、貸主から受け取ればいい。
家賃1か月分を上限として、貸主から受け取ればいい。
権利金がある場合
まずは言葉の確認から。
権利金
土地や建物の賃借権を設定したり譲渡したりするときに、賃借人が地主・家主に支払う金銭。契約が終了しても返還されることはない。
土地や建物の賃借権を設定したり譲渡したりするときに、賃借人が地主・家主に支払う金銭。契約が終了しても返還されることはない。
どういう場合に払われる金銭なのか。図で見ていくことにしよう。
借地権を設定する際、基本的には長期契約になり、地主はその間縛りを受けます。一方、土地を借りた人は長い間その土地を使い続けることができます。
つまり、土地を借りる側からしたら、借地権をGETするだけでも価値があるということです。その対価として地主に払う金銭が権利金です。
賃貸借で権利金が支払われた時に、報酬額を算定する特別ルールがあります。次のようなものです。
権利金の特別ルール
非居住用建物・宅地の賃貸借で、権利金が支払われた場合、権利金の額を売買価格とみなして、報酬の計算をしていい。
非居住用建物・宅地の賃貸借で、権利金が支払われた場合、権利金の額を売買価格とみなして、報酬の計算をしていい。
例えば、権利金が300万払われたとしたら、300万円×4% + 2万円 = 14万円の報酬を上限として受け取れますよってこと。家賃が10万円だったら、本来の報酬の上限は10万だけど、MAX14万の方を選んでもいいよってこと。
いやあ、混乱しますねえ。まず一発で理解できるようにはならないと思います。
ココの勉強の仕方は、ある程度時間をかけて過去問で沢山のケースを練習することです。過去問の解説を読みながらどのケースに当たるのか、どの数字を使うのかあてはめていく練習を繰り返ししてください。
「報酬の計算」については、次回記事でより詳しく解説していきますので、是非読んでみてください。
次回記事は、報酬の具体的な計算方法です。
【宅建の勉強法】宅建業法を図で解説 ~報酬額の具体的な計算方法~
【宅建の勉強法】宅建業法を図で解説 ~報酬額の具体的な計算方法~
前回の「業法 代理・媒介契約」についての解説リンクはこちらです。
【宅建の勉強法】宅建業法を図で解説 ~媒介・代理契約~
【宅建の勉強法】宅建業法を図で解説 ~媒介・代理契約~
コメント