この記事では、次のような疑問を解決していこうと思います。
・計画的に勉強したいので、重要分野の優先順位が知りたい!
宅建合格者や予備校の先生などは、宅建攻略の方法として「過去問をやり込め!」といいます。ふとここで思うのは「ホントに過去問やればイケるの?」ってことです。
問題集とかでは重要度をA、B、Cランクなどで振っているわけですが、どういった根拠に基づいてランク付けされているかを説明しているものは少ないか、あるいはほとんど見たことがありません。
実際、データ分析をしてランク付けをしているとは思いますが、根拠が明記されてない以上「なんとなく何回も繰り返し出題されているから重要だ!」止まりになってしまいます。
「なんとなく繰り返し出題されている」では、試験勉強において「重要かどうか」の判断材料としては乏しいかと思います。
そこで!
本記事では、この「なんとなく繰り返し出題されている」論点とは何かを過去問を通して分析し、注力して勉強すべき分野とそうでない分野を可視化・ランク付けしていきます。(当然、分析方法も明示します。)
勉強すべき優先度を把握することで、計画的にかつ効率的に勉強を進めることができると思いますので上手く活用してみてください。
※本記事では「宅建業法」のみの分析を行っています。
この記事の目的と活用方法
目的
繰り返しになりますが、この記事の目的を明確にしておきます。
活用方法
初めて勉強する場合
宅建の勉強を初めてやるって場合、まずやるべきは法律の全体像を把握することです。一通り、基本書・一問一答をこなしてからこの記事を読むことをお勧めします。
一通り勉強が終わった場合
この場合は、全体像や法律用語もある程度頭に入っていると思うので、「毎年繰り返し出題されている範囲」から読むのがイイでしょう。毎年、色々な角度から問われる条文は早めの準備が必要です。試験まで時間があるときに真っ先に勉強に取り掛かり、じっくり練習すべきところがわかります。
再チャレンジする場合
ある程度、宅建の勉強をしたことがある、または再チャレンジするって場合は、「より力を入れて勉強すべき範囲」から読み進めるのがイイです。この範囲にニガテ論点があると中々に合格は難しいと思います。自分の苦手な論点がどれくらいのランクに位置しているか、どんな分野の出題が多いのかなどの知見が得られます。
分析方法に関しては、読まなくとも理解しやすいように書いていますが、分析の根拠として載せておきました。時間がある場合に読んでみるのもいいかもしれません。
注意事項
この記事を読むにあたって、次のようなことに注意して読んでください。
〇2020年の試験は民法改正後初の試験です。宅建業法も民法改正に伴なって変更されている条文があります。基本的に改正された条文は出題されやすいので、改正された条文を優先しましょう。
〇データ分析の対象は「どの条文が過去に何回出題されたか」です。「この条文の〇項のこういった問われ方がよく聞かれる」などは、分析しようとは試みましたが、細かくなりすぎてしまい、返って傾向性が捉えられなくなってしまうと考えたので止めました。
〇頻出条文をランク付けしていきますが、勉強していく際は、その条文を含む論点を過去問・問題集などでくまなく練習してください。宅建業法で目指すべきは得点率90%以上です。
分析方法
まず、分析方法を明示しておきます。結論だけ知りたいって方は次の項の「繰り返し出題されている範囲」まで飛ばしてしまっても構いません。
分析対象
平成20年~平成29年の宅建本試験10年分から「宅建業法」のみを抽出。
(最新版でやってなくてごめんなさい。それでも多くの知見は得られます)
データの集め方
- 各問題を選択肢ごとにわけ、その選択肢が問うている論点が宅建業法のどの条文からの出題なのかを年度ごとにカウントする。一つの選択肢で複数条文が問われている場合も全てカウントする。
- 「〇〇という規定は宅建業法に存在しない」は欠損値扱いとし除外する。
- 規則・附則・告示・「解釈・運用の考え方」などの細かいルールはカウントから除外する。
集計は「Excel」で行いました。
毎年繰り返し出題されている範囲
さて、分析作業した結果を次からまとめていきます。
我々の最大の関心は、「毎年どういったところが出題されやすいか」というところです。これを解決するために、先ほど集めたデータから次の情報を抽出します。
100%は10年間のうち、毎年出題されているということです。逆に10%は10年のうち、一回しか出題されていないということです。「出題確率」と言い直してもいいかもしれません。
〇毎年欠かさず出題されている条文(グラフの100%のところ)が5つもある
〇2年に一回以上出る条文(出題割合が50%以上の条文)が全体の約半分を占める
出やすい範囲をランク付け
10年間の出題頻度が出たところで、条文ごとの重要度をランク分けしていきます。
この記事では以下のように定義します。
Aランク:50%~90%の確率で出る条文
Bランク:20%~40%の確率で出る条文
Cランク:10%の確率で出る条文
Sランク
過去10年間で毎年出題されている条文です。ここを落としてしまっては周りとの差は開く一方です。下記の分野は基本書・テキスト・過去問の該当箇所をくまなく、かつ完全に理解する必要があります。
34条の2 | 媒介契約 |
35条 | 重要事項の説明等 |
37条の2 | クーリング・オフ制度 |
46条 | 報酬 |
50条 | 標識の掲示等 |
Aランク
過去10年間で、2年に一回以上の割合で出題されている分野がここです。このランクに属する論点をきっちり抑えることで、安定して得点が取れるようになってくるはずです。
2条 | 用語の定義 |
3条 | 免許 |
5条 | 免許の基準 |
8条 | 宅地建物取引業者名簿 |
11条 | 廃業等の届出 |
18条 | 宅地建物取引士の登録 |
22条の2 | 宅地建物取引士証の交付等 |
25条 | 営業保証金の供託等 |
28条 | 営業保証金の不足額の供託 |
29条 | 営業保証金の保管替え等 |
30条 | 営業保証金の取戻し |
31条の3 | 宅地建物取引士の設置 |
32条 | 誇大広告等の禁止 |
33条 | 広告の開始時期の制限 |
34条 | 取引態様の明示 |
37条 | 書面の交付 |
38条 | 損害賠償額の予定等の制限 |
39条 | 手附の額の制限等 |
40条 | 瑕疵担保責任についての特約の制限 |
41条 | 未完成物件の手付金等の保全 |
41条の2 | 完成物件の手付金等の保全 |
47条 | 業務に関する禁止事項 |
47条の2 | 断定・威迫等の禁止 |
48条 | 証明書の携帯等 |
49条 | 帳簿の備付け |
64条の8 | 弁済業務保証金の還付等 |
64の10 | 還付充当金の納付等 |
65条 | 指示及び業務の停止 |
66条 | 免許の取消し |
71条 | 指導等 |
78条 | 適用の除外 |
Bランク
過去10年間の内、3~5年に一回の割合で出題されている論点です。イメージ的には20点中の16点以上を獲得するために必要な論点ってところでしょうか。宅建業法で8割以上をゲットするには必須のところです。
7条 | 免許換えの場合における従前の免許の効力 |
19条の2 | 登録の移転 |
20条 | 変更の登録 |
21条 | 死亡等の届出 |
22条の4 | 宅地建物取引士証の提示 |
26条 | 事務所新設の場合の営業保証金 |
27条 | 営業保証金の還付 |
33条の2 | 自己の所有に属しない宅地建物の売買契約締結の制限 |
34条の3 | 代理契約 |
35条の2 | 供託所等に関する説明 |
36条 | 契約締結等の時期の制限 |
42条 | 割賦販売の契約の解除等の制限 |
43条 | 所有権留保等の禁止 |
44条 | 不当な履行遅延の禁止 |
64条 | 指定の取消し等 |
64条の4 | 社員の加入等 |
64条の5 | 苦情の解決 |
64条の7 | 弁済業務保証金の供託 |
64条の9 | 弁済業務保証金分担金の納付等 |
64条の12 | 弁済業務保証金準備金 |
64条の15 | 社員の地位を失つた場合の営業保証金の供託 |
67条 | 所在地の確知の公告 |
68条 | 宅地建物取引士としてすべき事務の禁止等 |
69条 | 聴聞の特例 |
70条 | 監督処分の公告等 |
76条 | 免許の取消し等に伴う取引の結了 |
77条 | 信託会社等に関する特例 |
Cランク
10年間に一回しか出題されていない分野がこちらです。一番後まわしにしていい論点です。時間がなければやらなくてもいいかも。S・A・Bランクの論点が不安であればそちらの方を優先的にやるべきです。
3条の2 | 免許の条件 |
12条 | 無免許事業等の禁止 |
13条 | 名義貸しの禁止 |
15条 | 宅地建物取引士の業務処理の原則 |
15条の2 | 信用失墜行為の禁止 |
15条の3 | 知識及び能力の維持向上 |
17条 | 合格の取消し等 |
19条 | 登録の手続 |
45条 | 秘密を守る義務 |
64条の3 | 業務 |
64条の11 | 弁済業務保証金の取戻し等 |
68条の2 | 登録の消除 |
83条 | 罰則(罰金) |
より力を入れて勉強すべき分野
次の関心ごとは「より効率よく、時間をかけて勉強すべきところはどこか」というところです。先程の出題頻度がヒントになるはずです。データから次の情報を抽出していきます。
過去10年間に出題された「宅建業法の問題の選択肢の総数」は約750個です。今知りたいのは、この750個の選択肢の内、どの条文が何回ずつ出題されているかです。データを抽出しグラフにまとめたものが下の図です。この数が大きい条文ほど、毎年、色々な角度から設問が作られているということです。
Sランク、Aランクの条文は、業法で安定的に得点するために全てを満遍なく勉強する必要がありますが、上記グラフは勉強すべき論点の優先順位を示してくれています。
グラフからでは、第〇条しかわからないので、どんな内容の条文かを次の項で見ていきます。
最重要分野
この分野は言い換えれば、毎年、複数の論点が様々な角度から問われる分野です。問題集や過去問を反復練習し色々な角度から問われても大丈夫なくらい練習する必要があります。(一番左の数は過去10年間の条文の出題回数です、出題回数が多い順に並べてます。)この分野を落として合格はあり得ないでしょう。
35条 | 重要事項の説明等 | 75 |
37条 | 書面の交付 | 53 |
34条の2 | 媒介契約 | 40 |
46条 | 報酬・計算 | 38 |
37条の2 | クーリング・オフ | 34 |
5条 | 免許の基準 | 25 |
41条 | 未完成物件の手付金等の保全 | 22 |
47条の2 | 断定・威迫などの禁止 | 21 |
50条 | 標識の掲示等 | 20 |
39条 | 手附の額の制限等 | 18 |
40条 | 瑕疵担保責任についての特約の制限 | 18 |
2条 | 用語の定義 | 17 |
65条 | 指示及び業務の停止 | 14 |
47条 | 業務に関する禁止事項 | 13 |
3条 | 免許 | 12 |
33条 | 広告の開始時期の制限 | 12 |
38条 | 損害賠償額の予定等の制限 | 12 |
11条 | 廃業等の届出 | 10 |
ニガテ分野がここに入っていたら、優先的に理解するように努めてください。他分野よりまずは上の表を確実にできるようにしましょう。
重要分野
問われる論点は最重要ほどではないですが、ほぼ毎年出題される分野です。安定的に得点しなければいけない場合には必須の分野です。(一番左の数は過去10年間の条文の出題回数です、出題回数が多い順に並べてます。)
18条 | 宅地建物取引士の登録 | 9 |
25条 | 営業保証金の供託等 | 9 |
30条 | 営業保証金の取戻し | 9 |
49条 | 帳簿の備付け | 9 |
64条の8 | 弁済業務保証金の還付等 | 9 |
31条の3 | 宅地建物取引士の設置 | 8 |
48条 | 証明書の携帯等 | 8 |
66条 | 免許の取消し | 8 |
8条 | 宅地建物取引業者名簿 | 7 |
22条の2 | 宅地建物取引士証の交付等 | 7 |
32条 | 誇大広告等の禁止 | 7 |
34条 | 取引態様の明示 | 7 |
78条 | 適用の除外 | 7 |
64条の10 | 還付充当金の納付等 | 6 |
28条 | 営業保証金の不足額の供託 | 5 |
29条 | 営業保証金の保管替え等 | 5 |
41条の2 | 完成物件の手付金の保全 | 5 |
71条 | 指導等 | 5 |
まとめ
基本書・問題集・過去問などでよく見かける「最重要」・「重要」・「できなくとも気にしない」などのランク付けは基準が不明確かつ根拠も薄いです。そういった「なんとなく」な基準を、この記事ではデータに基づいてそれらのランク付けを行ってきました。
一方、ランク付けはしましたが、あくまで宅建業法の目指すべき得点率は90%以上です。これは譲っちゃあいけない。
いかに効率よく90%以上に達することができるかのヒントとして、この記事のランク付けを役に立てていただければと思います。
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