【宅建業法】実践!過去問演習 解き方と勉強法を学ぶ その47

宅建過去問演習

本記事の第一回に「過去問演習の意義とやり方」について書いてますので、まだ読んでないって方はそちらの方を一読ください。

今回はさまざまな「自ら売主の制限」の演習となります。プロが素人に売るときの様々な規制を学びます。これも素人である買主保護のための規制ですから、この目的を念頭に考えていきましょう。
 

では、早速問題やっていきます。必要に応じて紙とペンを用意して考えてみてください。悩んだときに簡単な絵を描くと色々思い出せることがあるかもしれません。

 

宅建業法の演習 第85問

2011年 問39

Q:宅地建物取引業者A社が、自ら売主として行う宅地(代金3,000万円)の売買に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定に違反するものはどれか。

  1. A社は、宅地建物取引業者である買主B社との間で売買契約を締結したが、B社は支払期日までに代金を支払うことができなかった。A社は、B社の債務不履行を理由とする契約解除を行い、契約書の違約金の定めに基づき、B社から1,000万円の違約金を受け取った。

  2. A社は、宅地建物取引業者でない買主Cとの間で、割賦販売の契約をしたが、Cが賦払金の支払を遅延した。A社は20日の期間を定めて書面にて支払を催告したが、Cがその期間内に賦払金を支払わなかったため、契約を解除した。

  3. A社は、宅地建物取引業者でない買主Dとの間で、割賦販売の契約を締結し、引渡しを終えたが、Dは300万円しか支払わなかったため、宅地の所有権の登記をA社名義のままにしておいた。

  4. A社は、宅地建物取引業者である買主E社との間で、売買契約を締結したが、宅地が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任について、「不適合による契約の解除又は損害賠償の請求は、契約対象物件である宅地の引渡しの日から1年を経過したときはできない」とする旨の特約を定めていた。

問題の外観
本肢で学ぶべきことは、「買主が素人か、宅建業者かを正確に把握すること」。これを読み落とすと絶対に正解にたどり着かない。「自ら売主」の論点は、「買主が素人」であるときどうやって素人を守ろうかという論点。だから、買主が業者の場合は「自ら論点」の保護規定は当てはまらない。買主が宅建業者の場合は、基本何でもOKくらいに思っておけばよく、出たらラッキーくらいなもんだね。

選択肢ごとのコメント

肢1 A社は、宅地建物取引業者である買主B社との間で売買契約を締結したが、B社は支払期日までに代金を支払うことができなかった。A社は、B社の債務不履行を理由とする契約解除を行い、契約書の違約金の定めに基づき、B社から1,000万円の違約金を受け取った。
違反しない。超基本問題だがひっかけ。売主が業者、買主が素人の場合、「違約金は最高で売買代金の20%まで」しか定めることはできない。本問の場合、3000万円×20%=600万円を超える分は違反。しかし、Bは宅建業者なので買主が素人の場合のルールは適用されない。よって1000万円の違約金を受け取っても宅建業法に違反しない。
 
肢2 A社は、宅地建物取引業者でない買主Cとの間で、割賦販売の契約をしたが、Cが賦払金の支払を遅延した。A社は20日の期間を定めて書面にて支払を催告したが、Cがその期間内に賦払金を支払わなかったため、契約を解除した。
違反する。割賦販売契約において、素人である買主の分割払いの返済が遅れたら、売り主である業者は「30日以上の相当期間を定め書面で『返済してくれ!』と催告」し、それでも支払いがない場合は、契約解除や残ローンの一括返済を請求できる。本問の場合、「20日の期間を定めて書面にて支払を催告」となっているので、宅建業法のルールよりも買主が不利になる。よってこれは違反行為となる。
 
肢3 A社は、宅地建物取引業者でない買主Dとの間で、割賦販売の契約を締結し、引渡しを終えたが、Dは300万円しか支払わなかったため、宅地の所有権の登記をA社名義のままにしておいた。
違反しない。割賦販売(分割払い)の場合は、代金の30%を受け取るまで、買主は物件の所有権移転登記をいなくてもいいが、30%を超えたら移転登記しないとダメ。本問の場合、3000万円×30%=900万円以下だったら、買主は所有権を移転しなくともよい。300万円しか払われていないので、移転登記しなくとも問題なし。
 
肢4 A社は、宅地建物取引業者である買主E社との間で、売買契約を締結したが、宅地が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任について、「不適合による契約の解除又は損害賠償の請求は、契約対象物件である宅地の引渡しの日から1年を経過したときはできない」とする旨の特約を定めていた。
違反しない。買主が宅建業者である以上、素人同様の保護はする必要ない。よって、業者間同士の特約は契約自由の原則より、どんな特約を組んでも基本は何でもOK。
正解・・・②
基本事項の確認
〇「所有権の留保」を「割賦販売」という語句を用いて説明せよ。
〇今一度、割賦販売とはどういう契約か説明せよ。
〇割賦販売契約において、素人である買主の分割払いの返済が遅れた場合、売り主が解除をする前にすべきことは何か説明せよ。
 
重要事項の暗記に困っている場合は下記の記事を参考にしてみてください。
 

宅建業法の演習 第86問

2013年 問38

Q:宅地建物取引業者A社が、自ら売主として宅地建物取引業者でない買主Bとの間で締結した売買契約に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、誤っているものはどれか。

  1. A社は、Bとの間で締結した中古住宅の売買契約において、引渡後2年以内に発見された雨漏り、シロアリの害、建物の構造耐力上主要な部分の不具合についてのみ責任を負うとする特約を定めることができる。 

  2. A社は、Bとの間における新築分譲マンションの売買契約(代金3,500万円)の締結に際して、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額と違約金の合計額を700万円とする特約を定めることができる。 

  3. A社は、Bとの間における土地付建物の売買契約の締結に当たり、手付金100万円及び中間金200万円を受領する旨の約定を設けた際、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、売主は買主に受領済みの手付金及び中間金の倍額を支払い、また、買主は売主に支払済みの手付金及び中間金を放棄して、契約を解除できる旨の特約を定めた。この特約は有効である。  

  4. 空欄

問題の外観

三択だが、なかなか難しい。自信をもって答えられるのは肢2くらいかな。あとはテキストに載っていないような細かい内容。こういう論点は過去問を繰り返し練習し覚えるに限る。

 

選択肢ごとのコメント

肢1 A社は、Bとの間で締結した中古住宅の売買契約において、引渡後2年以内に発見された雨漏り、シロアリの害、建物の構造耐力上主要な部分の不具合についてのみ責任を負うとする特約を定めることができる。 
誤り。宅建業法40条には「宅建業者は、自ら売主となる売買契約において、その目的物の契約不適合担保責任に関し、その通知期間について、目的物の「引き渡しの日」から2年以上となる特約をする場合を除き、買主に不利な特約をしてはならない」とあり、これは覚えておくべき事項。本論点は、責任の範囲が「構造耐力上主要な部分の不具合についてのみ」と限定している。よって買主に不利な特約だから、本特約は無効である。
 
肢2 A社は、Bとの間における新築分譲マンションの売買契約(代金3,500万円)の締結に際して、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額と違約金の合計額を700万円とする特約を定めることができる。 
正しい。超基本問題。損害賠償の予定額と違約金の合計額は売買代金の20%を「超えてはいけない」。3500万円×20%=700万円を超えてはいけないということである。つまり701万円以上はダメ。よって本肢の特約は問題なし。
 
肢3 A社は、Bとの間における土地付建物の売買契約の締結に当たり、手付金100万円及び中間金200万円を受領する旨の約定を設けた際、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、売主は買主に受領済みの手付金及び中間金の倍額を支払い、また、買主は売主に支払済みの手付金及び中間金を放棄して、契約を解除できる旨の特約を定めた。この特約は有効である。  
誤り。手付解除の場合、売り主は手付金額の倍額返還、買主は手付金の放棄(手付流し)が原則。本問の場合、中間金も含まれている。原則で「手付金」を放棄すれば素人の買主は解除できるのに、中間金を含めた額まで放棄するのは買主に不利でしょ。よって、本問の特約は無効。テキストにも書いてないような知識なので本問で覚えてしまおう。
 
肢4 空欄
空欄
正解・・・①、③
基本事項の確認
〇1000万円「以上」、1000万円を「超える」、1000万円「未満」に1000万円は含まれるか。
〇手付金等保全措置をする場合、未完成物件の保全措置をやってくれない期間はどこか。
〇素人の買主がクリーリングオフできなくなるのは、買主が何をしたときか。
 

過去の拙ブログでもこのあたりの問題の解説記事を書いていますので、過去問を解いて知識が足りないと思ったら読んでみてください。

 

こんな感じで定期的に記事を書いていきますので、皆さんの勉強の一助にしてみてください。

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