【宅建業法】実践!過去問演習 解き方と勉強法を学ぶ その46

宅建過去問演習

本記事の第一回に「過去問演習の意義とやり方」について書いてますので、まだ読んでないって方はそちらの方を一読ください。

今回はさまざまな「自ら売主の制限」の演習となります。プロが素人に売るときの様々な規制を学びます。これも素人である買主保護のための規制ですから、この目的を念頭に考えていきましょう。
 

では、早速問題やっていきます。必要に応じて紙とペンを用意して考えてみてください。悩んだときに簡単な絵を描くと色々思い出せることがあるかもしれません。

 

宅建業法の演習 第83問

2008年 問40

Q:宅地建物取引業者Aが、自ら売主として宅地建物取引業者でない買主Bとの間で宅地の売買契約を締結した場合における次の記述のうち、民法及び宅地建物取引業法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

  1. 当事者の債務不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額を定めていない場合、損害賠償の請求額は売買代金の額を超えてはならない。

  2. 当事者の債務不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額を売買代金の2割とし、違約金の額を売買代金の1割とする定めは、これらを合算した額が売買代金の3割を超えていないことから有効である。

  3. Aが、当該売買契約の解除を行う場合は、Bに対して「手付の倍額を償還して、契約を解除する。」という意思表示を書面で行うことのみをもって、契約を解除することができる。

  4. Aは、当該売買契約の締結日にBから手付金を受領し、翌日、Bから内金を受領した。その2日後、AがBに対して、手付の倍額を償還することにより契約解除の申出を行った場合、Bは、契約の履行に着手しているとしてこれを拒むことができる。

問題の外観
肢1,2は瞬時に判断で来てほしい問題。テキストの知識だけでは太刀打ちできない問題が肢3,4。特に肢3がややこしい。売り主、買主によって手付解除をするための条件がことなるということをこの問題でしっかり研究しておきたい。

選択肢ごとのコメント

肢1 当事者の債務不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額を定めていない場合、損害賠償の請求額は売買代金の額を超えてはならない
誤り。損害賠償の予定額を「定める場合」には、売買代金の10分の2を超えてはならないという規定はあるが、損害賠償の予定額を「定めていない場合」は売買代金の額という制限はなく、「実損害全額」の損害賠償の請求が可能。
 
肢2 当事者の債務不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額を売買代金の2割とし、違約金の額を売買代金の1割とする定めは、これらを合算した額が売買代金の3割を超えていないことから有効である。
誤り。宅建業法の規定では「損害賠償額と違約金の合計額が代金の20%を超えちゃいけない、超えた分は無効」なので、2割を超えた部分は無効になる。
 
肢3 Aが、当該売買契約の解除を行う場合は、Bに対して「手付の倍額を償還して、契約を解除する。」という意思表示を書面で行うことのみをもって、契約を解除することができる。
誤り。手付解除をするには、売主は「手付金の倍額の現実の提供」が要求されている。つまり、手付金の倍額を買主に差し戻して初めて解除ができるということ。意思表示の書面のみでは足りない。
 
肢4 Aは、当該売買契約の締結日にBから手付金を受領し、翌日、Bから内金を受領した。その2日後、AがBに対して、手付の倍額を償還することにより契約解除の申出を行った場合、Bは、契約の履行に着手しているとしてこれを拒むことができる。
正しい。「相手方が、契約の履行に着手した場合には手付解除はできない」というのが大原則。買主Bは内金を払っており、「内金の支払いは契約の履行に着手した行為」という判例があるので、買主Bは契約の履行に着手しているので、契約解除の申出を拒否できる。
正解・・・④
基本事項の確認
〇手付金を受け取れる金額の上限、損害賠償+違約金の合計額の上限は売買代金のいくらか。
〇手付金保全措置を取らなければいけない手付金額は売買代金の何%か
〇手付金「等」の「等」にはどういったものがあるか。
 
重要事項の暗記に困っている場合は下記の記事を参考にしてみてください。
 

宅建業法の演習 第84問

2009年 問37

Q:自らが売主である宅地建物取引業者Aと、宅地建物取引業者でないBとの間での売買契約に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. Aは、Bとの間における建物の売買契約(代金2,000万円)の締結に当たり、手付金として100万円の受領を予定していた。この場合において、損害賠償の予定額を定めるときは、300万円を超えてはならない。

  2. AとBが締結した建物の売買契約において、Bが手付金の放棄による契約の解除ができる期限について、金融機関からBの住宅ローンの承認が得られるまでとする旨の定めをした。この場合において、Aは、自らが契約の履行に着手する前であれば、当該承認が得られた後は、Bの手付金の放棄による契約の解除を拒むことができる。

  3. Aは、喫茶店でBから宅地の買受けの申込みを受けたことから、翌日、前日と同じ喫茶店で当該宅地の売買契約を締結し、代金の全部の支払を受けた。その4日後に、Bから法第37条の2の規定に基づくいわゆるクーリング・オフによる当該契約を解除する旨の書面による通知を受けた場合、Aは、当該宅地をBに引き渡していないときは、代金の全部が支払われたことを理由に当該解除を拒むことはできない。

  4. Aは、Bとの間で宅地の割賦販売の契約(代金3,000万円)を締結し、当該宅地を引き渡した。この場合において、Aは、Bから1,500万円の賦払金の支払を受けるまでに、当該宅地に係る所有権の移転登記をしなければならない。

問題の外観
全て事例ケースかつ、使う知識は基本的な内容ばかりの問題なので、過去問を繰り返し練習してパターンを身に着けておこう。テキストのみではこういう事例ケースの問題はなかなか解けるようにはならないので、過去問を練習するのはこういう「生きた問題」に数多く振れるいい機会である。
 

選択肢ごとのコメント

肢1 Aは、Bとの間における建物の売買契約(代金2,000万円)の締結に当たり、手付金として100万円の受領を予定していた。この場合において、損害賠償の予定額を定めるときは、300万円を超えてはならない
誤り。売り主が買主から受け取れる「手付金の上限」は、売買代金の20%まで。2000万×20%=400万円までうけとれるので100万円は問題なし。一方、「損害賠償の予定額」を定めるときは、売買代金の20%を超える額を定めることができない。(2000万円×20%=400万円超えちゃダメ)。本肢は「300万円をこえてはいけない」となっているので間違い。
 
肢2 AとBが締結した建物の売買契約において、Bが手付金の放棄による契約の解除ができる期限について、金融機関からBの住宅ローンの承認が得られるまでとする旨の定めをした。この場合において、Aは、自らが契約の履行に着手する前であれば、当該承認が得られた後は、Bの手付金の放棄による契約の解除を拒むことができる。
誤り。手付解除は、「相手方が契約の履行に着手するまで」であれば買主は手付金を放棄して解除できる。手付放棄による契約解除の期間が「買主Bが住宅ローンの承認が得られるまで」は売主が履行の着手をする前段階の話であり、「履行に着手するまで」より短い期間になってしまい買主は不利益を被る。よって、この旨の特約は無効。
 
肢3 Aは、喫茶店でBから宅地の買受けの申込みを受けたことから、翌日、前日と同じ喫茶店で当該宅地の売買契約を締結し、代金の全部の支払を受けた。その4日後に、Bから法第37条の2の規定に基づくいわゆるクーリング・オフによる当該契約を解除する旨の書面による通知を受けた場合、Aは、当該宅地をBに引き渡していないときは、代金の全部が支払われたことを理由に当該解除を拒むことはできない。
正しい。本肢で買主Bは「喫茶店で買受けの申込み」をしているので、クーリング・オフできる。契約の場所については、クーリング・オフに関係なし!一方、買主がクーリングオフできなくなるのは、「物件の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払つたとき」なので、売り主が物件の引き渡しをしていない以上、買主Bはクーリングオフできる。よって、売り主Aはこのクーリングオフによる契約の解除を拒むことはできない。
 
肢4 Aは、Bとの間で宅地の割賦販売の契約(代金3,000万円)を締結し、当該宅地を引き渡した。この場合において、Aは、Bから1,500万円の賦払金の支払を受けるまでに、当該宅地に係る所有権の移転登記をしなければならない。
誤り。割賦販売と言うのは、支払いを「分割支払い」で行う取引。本論点、「所有権の留保」とは、代金が支払われるまで売り主が物件の登記を買主に移転しないでおくこと。代金が支払われない場合、売り主は契約解除してその物件をほかの取引に使えるし、買主としても代金を分割で支払って、いつまでたっても登記を移転されないのは困る。なので、その折衷案として宅建業法は「売買代金の30%の支払いを受けるまでは売主は所有権を留保して良い」となっている。本問は3000万円×30%=900万円を超えたら所有権を移転しなければいけないので誤り。
正解・・・③
基本事項の確認
〇買主がクーリングオフできなくなる条件を調べましょう。
〇買主から受け取れる手付金の額の上限、損害賠償・違約金の予定額の上限はいくらか。
〇割賦販売契約とは何か。
 

過去の拙ブログでもこのあたりの問題の解説記事を書いていますので、過去問を解いて知識が足りないと思ったら読んでみてください。

 

こんな感じで定期的に記事を書いていきますので、皆さんの勉強の一助にしてみてください。

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