【宅建業法】実践!過去問演習 解き方と勉強法を学ぶ その45

宅建過去問演習

本記事の第一回に「過去問演習の意義とやり方」について書いてますので、まだ読んでないって方はそちらの方を一読ください。

今回はさまざまな「自ら売主の制限」の演習となります。プロが素人に売るときの様々な規制を学びます。これも素人である買主保護のための規制ですから、この目的を念頭に考えていきましょう。
 

では、早速問題やっていきます。必要に応じて紙とペンを用意して考えてみてください。悩んだときに簡単な絵を描くと色々思い出せることがあるかもしれません。

 

宅建業法の演習 第81問

2008年 問40

Q:宅地建物取引業者Aが、自ら売主として、宅地建物取引業者でないBと建物の売買契約を締結する場合に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)及び民法の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. Bが契約の履行に着手するまでにAが売買契約の解除をするには、手付の3倍に当たる額をBに償還しなければならないとの特約を定めることができる。

  2. Aの違約によりBが受け取る違約金を売買代金の額の10分の3とするとの特約を定めることができる。

  3. Bから法第37条の2の規定に基づくいわゆるクーリング・オフによる売買契約の解除があった場合でも、Aが契約の履行に着手していれば、AはBに対して、それに伴う損害賠償を請求することができる。

  4. Aは、担保責任を負うためにBが契約不適合を通知すべき期間として、引渡しの日から2年で、かつ、Bが契約不適合を発見した時から30日以内とする特約を定めることができる。

問題の外観
宅建業法の立法目的は「一般消費者の保護」。なので、宅建業法は「宅建業者に有利な特約は無効とし、素人の方に有利な特約は有効」という、原則がある。このことを知っていれば、初見の問題でもまあまあ対処できる場合がある。

選択肢ごとのコメント

肢1 Bが契約の履行に着手するまでにAが売買契約の解除をするには、手付の3倍に当たる額をBに償還しなければならないとの特約を定めることができる。
正しい。手付解除は、売り主は手付倍額返還、買主は手付放棄が基本中の基本。本肢は売主が解除する際に手付金の3倍を償還するって言ってるのだから、買主にとっては非常に有利な内容である。よってこの特約は有効。一方、手付解除は「契約の相手方が履行に着手するまで」できるということは暗記必須事項。
 
肢2 Aの違約によりBが受け取る違約金を売買代金の額の10分の3とするとの特約を定めることができる。
誤り。これは数字を覚えていないとできない。「損害賠償の額を予定、又は違約金の約定」をする場合、その合計額が売買代金の20%を超える部分は無効。全部が全部無効になるわけでなく、20%(10分の2)は有効で、残りの10%(10分の1)の部分は無効になる。
 
肢3 Bから法第37条の2の規定に基づくいわゆるクーリング・オフによる売買契約の解除があった場合でも、Aが契約の履行に着手していれば、AはBに対して、それに伴う損害賠償を請求することができる。
誤り。繰り返し出てる論点。クーリングオフによる解除は「無条件解除」だから、業者である売り主は損害賠償・違約金など買主に請求できない。売り主は黙って涙を呑んでくださいってこと。
 
肢4 Aは、担保責任を負うためにBが契約不適合を通知すべき期間として、引渡しの日から2年で、かつ、Bが契約不適合を発見した時から30日以内とする特約を定めることができる。
誤り。民法の原則では契約不適合を知った時から1年以内に、契約不適合である旨を売主に通知する必要がある。ただし、民法のままだと欠陥を10年、20年で発見すれば、担保責任を負わなければならず、過度に素人の買主を保護することになり業者が不利になりすぎてしまう。そこで宅建業法では、「通知期間を引渡しの日から2年以上とする」と素人の買主の過度な保護を制限しました。よって引き渡しの日から2年というのは有効です。しかし、「発見した日から30日」というのは民法の規定よりも買主が不利になるからダメ。「AかつB」はAもBも満たさないとダメっていう意味は大丈夫ですよね!
正解・・・①
基本事項の確認
〇業者が、素人の買主から受け取れる手付金の上限額は売買代金のいくら分か。
〇買主があること行うとクーリングオフできなくなるが、どういうときか。
〇穴埋め。契約不適合担保責任を追及する場合、契約不適合を〇〇した時から〇〇年以内に、契約不適合である旨を売主に〇〇する必要がある
 
重要事項の暗記に困っている場合は下記の記事を参考にしてみてください。
 

宅建業法の演習 第82問

2009年 問37

Q:自らが売主である宅地建物取引業者Aと、宅地建物取引業者でないBとの間での売買契約に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. Aは、Bとの間における建物の売買契約(代金2,000万円)の締結に当たり、手付金として100万円の受領を予定していた。この場合において、損害賠償の予定額を定めるときは、300万円を超えてはならない。

  2. AとBが締結した建物の売買契約において、Bが手付金の放棄による契約の解除ができる期限について、金融機関からBの住宅ローンの承認が得られるまでとする旨の定めをした。この場合において、Aは、自らが契約の履行に着手する前であれば、当該承認が得られた後は、Bの手付金の放棄による契約の解除を拒むことができる。

  3. Aは、喫茶店でBから宅地の買受けの申込みを受けたことから、翌日、前日と同じ喫茶店で当該宅地の売買契約を締結し、代金の全部の支払を受けた。その4日後に、Bから法第37条の2の規定に基づくいわゆるクーリング・オフによる当該契約を解除する旨の書面による通知を受けた場合、Aは、当該宅地をBに引き渡していないときは、代金の全部が支払われたことを理由に当該解除を拒むことはできない。

  4. Aは、Bとの間で宅地の割賦販売の契約(代金3,000万円)を締結し、当該宅地を引き渡した。この場合において、Aは、Bから1,500万円の賦払金の支払を受けるまでに、当該宅地に係る所有権の移転登記をしなければならない。

問題の外観
全て事例ケースかつ、使う知識は基本的な内容ばかりの問題なので、過去問を繰り返し練習してパターンを身に着けておこう。テキストのみではこういう事例ケースの問題はなかなか解けるようにはならないので、過去問を練習するのはこういう「生きた問題」に数多く振れるいい機会である。
 

選択肢ごとのコメント

肢1 Aは、Bとの間における建物の売買契約(代金2,000万円)の締結に当たり、手付金として100万円の受領を予定していた。この場合において、損害賠償の予定額を定めるときは、300万円を超えてはならない
誤り。売り主が買主から受け取れる「手付金の上限」は、売買代金の20%まで。2000万×20%=400万円までうけとれるので100万円は問題なし。一方、「損害賠償の予定額」を定めるときは、売買代金の20%を超える額を定めることができない。(2000万円×20%=400万円超えちゃダメ)。本肢は「300万円をこえてはいけない」となっているので間違い。
 
肢2 AとBが締結した建物の売買契約において、Bが手付金の放棄による契約の解除ができる期限について、金融機関からBの住宅ローンの承認が得られるまでとする旨の定めをした。この場合において、Aは、自らが契約の履行に着手する前であれば、当該承認が得られた後は、Bの手付金の放棄による契約の解除を拒むことができる。
誤り。手付解除は、「相手方が契約の履行に着手するまで」であれば買主は手付金を放棄して解除できる。手付放棄による契約解除の期間が「買主Bが住宅ローンの承認が得られるまで」は売主が履行の着手をする前段階の話であり、「履行に着手するまで」より短い期間になってしまい買主は不利益を被る。よって、この旨の特約は無効。
 
肢3 Aは、喫茶店でBから宅地の買受けの申込みを受けたことから、翌日、前日と同じ喫茶店で当該宅地の売買契約を締結し、代金の全部の支払を受けた。その4日後に、Bから法第37条の2の規定に基づくいわゆるクーリング・オフによる当該契約を解除する旨の書面による通知を受けた場合、Aは、当該宅地をBに引き渡していないときは、代金の全部が支払われたことを理由に当該解除を拒むことはできない。
正しい。本肢で買主Bは「喫茶店で買受けの申込み」をしているので、クーリング・オフできる。契約の場所については、クーリング・オフに関係なし!一方、買主がクーリングオフできなくなるのは、「物件の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払つたとき」なので、売り主が物件の引き渡しをしていない以上、買主Bはクーリングオフできる。よって、売り主Aはこのクーリングオフによる契約の解除を拒むことはできない。
 
肢4 Aは、Bとの間で宅地の割賦販売の契約(代金3,000万円)を締結し、当該宅地を引き渡した。この場合において、Aは、Bから1,500万円の賦払金の支払を受けるまでに、当該宅地に係る所有権の移転登記をしなければならない。
誤り。割賦販売と言うのは、支払いを「分割支払い」で行う取引。本論点、「所有権の留保」とは、代金が支払われるまで売り主が物件の登記を買主に移転しないでおくこと。代金が支払われない場合、売り主は契約解除してその物件をほかの取引に使えるし、買主としても代金を分割で支払って、いつまでたっても登記を移転されないのは困る。なので、その折衷案として宅建業法は「売買代金の30%の支払いを受けるまでは売主は所有権を留保して良い」となっている。本問は3000万円×30%=900万円を超えたら所有権を移転しなければいけないので誤り。
正解・・・③
基本事項の確認
〇買主がクーリングオフできなくなる条件を調べましょう。
〇買主から受け取れる手付金の額の上限、損害賠償・違約金の予定額の上限はいくらか。
〇割賦販売契約とは何か。
 

過去の拙ブログでもこのあたりの問題の解説記事を書いていますので、過去問を解いて知識が足りないと思ったら読んでみてください。

 

こんな感じで定期的に記事を書いていきますので、皆さんの勉強の一助にしてみてください。

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