【宅建の民法】債権・債務の基礎を図で解説【賃貸借 編】

債権・債務って何 宅建・民法

債権・債務って何

この記事では、次のような疑問を解決していこうと思います。

・とにかく民法がニガテ。初見の問題が全く分からない
・債権債務のところがよくわからないから、整理して理解したい。

宅建試験の初学者にとって、民法の最大の関門となるのはこの「債権・債務」でしょう。

債権と債務がどういうものかをよく理解していないと、宅建試験に頻出の「抵当権」・「保証」・「連帯債務」・「賃貸借」などの議論がどんどんわからなくなっていきます。

そこで、この記事ではこれら宅建試験に頻出な論点の土台となる「債権・債務」を図を用いて詳しく解説していこうと思います

学習効果を高めるために、読者自身で図を描いて考えるのがイイです。圧倒的に理解が深まります。

宅建試験に出る債権・債務

そもそも宅建試験は「不動産」に関する試験ですから、試験で問われることも当然不動産にまつわる内容になります。

民法の規定には数多くの取引が規定されていますが、宅建士の仕事は「不動産の取引」がメインですから、「売買契約」と「賃貸借契約」の2つがメインとなります。一応、言葉の確認です。

売買契約
当事者の一方が目的物の財産権を相手方に移転し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを内容とする契約

賃貸借契約(レンタル)
ある物についてその所有者が相手方に使用収益させ、相手方から対価を受け取る契約

よって、試験対策的にもこの二つの契約に関する債権・債務をメインに理解していけばいいということになります。

加えて、抵当権や、保証契約、連帯債務などのところは「お金の貸し借り」がスタートで議論されることが多いので、金銭の「消費貸借契約」についても理解しておくべきです。

当然、年によっては「贈与契約」や「請負契約」など他の不動産にまつわる契約が出題されますが、あくまで宅建試験で聞かれるのは「商売として不動産を取引すること」とそれにまつわる「カネの流れ」です。

宅建試験は不動産取引に関する問題が聞かれるので、「売買契約」と「賃貸借契約」をメインに理解していくのが得策。加えて、「金銭消費貸借契約」の基本を押さえる。
 

契約しないと始まらない

では本記事の本題である「賃貸借契約」に行きましょう。

イメージをしやすいように、具体例でいきます。どの人も一度は経験がある「部屋を借りる」という行為です。次の文を読んで状況をつかんでみてください。

らくたろうは社会人1年目。一人暮らしをするために部屋を借りたい。そこで不動産屋さんに物件を見に行きました。とある物件が目につきます。スーパーに近い、駅から徒歩5分。よしこの物件にしよう!

らくたろう「すいません、この物件を借りたいです!」
不動産屋「お目が高い!いいですよ!」

書類など書いてハンコをついて、らくたろうは無事この物件を借りることができました。

※この事例では、話を簡単にするために不動産屋さんが持っている物件から直にレンタルすることにします。

上記は「賃貸借契約」を結んだ時の例です。このときのらくたろうの

「すいません、この物件を借りたいです!」
と自分の意思を表示することを「申込み」といいます。それで、不動産屋さんが
「お目が高い!いいですよ!」
と返事をすることを「承諾」って言います。このやり取りがあると「契約」が成立したことになります。
条文でも確認しておきましょう。
改正民法第522条1項
契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。

さあ、らくたろうは無事に契約を済ませて部屋を借りることができました。

※契約の成立は、インターネットの対面でないときやその成立のタイミングなど沢山論点がありますが、この記事では割愛します。ベースである対面での契約についてまずはしっかり押さえます。

申込み」と「承諾」の両方があって契約が成立する
 

賃貸借の債権・債務

さて、らくたろうと不動産屋さんは賃貸借契約を結んだことで、次の図のような関係に置かれます。

債権債務

らくたろうは新しい自分の部屋を借りたいから使わせてくれ、不動産屋も商売ですから使わせてるんだからその分お金払えってなります。

賃貸借の場合、借りた人は「賃借人」、貸した人は「賃貸人」なんて言います。

このときの「〇〇してください、〇〇してくれ」と請求できる権利のことを「債権」といいます。別にお金に限った話ではないです。「この日までに納品してください」とか「この日までにお家のカギを渡してください」とかも債権です。

おや、債権しか出てこない、債務はどこに行ったの?と思うのは当然ですね。実は先ほどの図は厳密にいうと不足してますので、下のように書き直します。

債権債務2

このとき債権と対となる「〇〇しなければならない」義務のことを「債務」といいます。

上の図からわかるように一つの行動に対して債権・債務は必ず一対になります。債権だけ発生し、対になる債務がないなんてことはあり得ません。

賃借人の債務⇔賃貸人の債権
(らくたろうの家賃を支払う義務 ⇔不動産屋の家賃を払えと請求する権利)
賃貸人の債務⇔賃借人の債権
(不動産屋の部屋を使わせる義務⇔らくたろうの部屋を使わせてと請求する権利)

というワンペアの形になります。

言い方を変えれば、らくたろうは「部屋を使わせてください」と請求できる債権者であるとともに、「家賃を支払わなければいけない」債務者になります。

一方、不動産屋さんは「家賃を払ってください」と請求できる債権者になるとともに、「部屋を使わせないといけない」債務者になります。

くどいですが、債権者とは「○○してください」と請求できる権利である債権を持っている人のこと、債務者とは「〇〇しなければならない義務」である債務を持っている人のことです。

このように契約当事者が、双方とも債権者・債務者の立場に置かれる契約のことを「双務契約」とか言います。(賃貸借契約は必ず双務契約になります)

賃貸借契約の場合、らくたろうと不動産屋の債権・債務の関係は基本的に契約が終了するまで続きます。

債権は「○○してください」と請求できる権利、債務は「〇〇しなければならない」義務。
 

賃借権とは

賃貸借契約の債権・債務の基本的な関係を見たところで、もう少し深堀していきましょう。

賃貸人と賃借人の債権・債務の関係は、「部屋使わせてください」、「家賃払ってください」以外にもあります。宅建試験で覚えておくべき債権・債務の関係はこんな感じです。まずは当事者が守らなければいけない義務(債務)からです。

債務関係

債権は賃貸人・賃借人の義務(債務)をひっくり返すだけですから、こんな感じです。

債権関係

債権と債務は必ず一対になりますから、賃貸人・賃借人の義務(債務)⇔賃貸人・賃借人の権利(債権)という関係が成り立ちます。

ここで、図の賃借人(らくたろう)が賃貸人(不動産屋)に対して持っている権利(債権)を、ひっくるめて「賃借権」といいます。これが賃借権です!!

賃借権は宅建試験の権利関係で必出の「借地借家法」の根幹をなす概念ですから、しっかり理解しましょう。

ほとんどの宅建のテキスト・基本書はこれら債権・債務の関係をすっ飛ばして、いきなり賃借権の譲渡とか転貸借の解説が出てきます。そりゃあ理解に苦しむわけですよね。細かい知識だけ覚えようとしても、全体像が理解できなくては記憶の定着も薄いですし、何より勉強のモチベーションが持ちません。
ここまでの全体像が分かってくると賃借権の譲渡・転貸・敷金などの色々な論点の理解がスムーズになってくると思います。(時間を見つけてこの辺りの解説記事も書いていこうと思います。)
賃借権は、賃借人が賃貸人に対してもっている債権。いろいろなことが請求できる権利。ココの理解が借地借家法への第一歩!
 

今回の記事では、賃貸借契約を結んだ時の債権・債務の関係を見てきました。次回の記事では「売買契約」の債権・債務の関係を解説していくので、是非読んでみてください。


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