【宅建の民法】債権と債務の基礎を図で解説【売買契約 編】

売買契約 宅建・民法

売買契約

この記事では、次のような疑問を解決していこうと思います。

・とにかく民法がニガテ。初見の問題が全く分からない
・債権債務のところがよくわからないから、整理して理解したい。

宅建試験の初学者にとって、民法の最大の関門となるのはこの「債権・債務」でしょう。

基本書とかでいきなり「債権」・「債務」とか出てきてもどういう概念だかわかんないですよ。

いざ、基本書とかで勉強しようと思っても、ごく当然のごとく債権・債務が登場し面食らう読者も多いはずです。

さらに債権と債務がどういうものかをよく理解していないと、宅建試験に頻出の「抵当権」・「保証」・「連帯債務」・「賃貸借」などの議論がどんどんわからなくなっていきます。

そこで、この記事ではこれら宅建試験に頻出な論点の土台となる「債権・債務」を図を用いて詳しく解説していこうと思います。債権債務が全く分からない人向けに書いてますので、かなり冗長な表現が多いですが、全てはすんなり理解できるように書いた表現です。ご容赦ください。

前回の記事で「賃貸借契約」の債権・債務を見ていきましたが、今回は「売買契約」の債権・債務を解説していきます。

学習効果を高めるために、読者自身で図を描いて考えるのがイイです。圧倒的に理解が深まります。

※この記事の内容は、【宅建の民法】債権と債務の基礎を図で解説【賃貸借 編】とほぼ似通った内容となっていますが、債権・債務の理解をより深めるために併せて読んで頂くことをお勧めします。

契約しないと始まらない

前回と同じように、イメージをつかむため、具体例でいきます。今回は「お家を購入する」という行為です。賃貸借はだれも経験があると思いますが、不動産の売買はほとんどの人にとっては人生で1回あるかないかの取引です。次の文を読んで状況をつかんでみてください。

らくたろうは30歳。子供も生まれるし、賃貸でなく自分のお家が欲しい!新築だと予算オーバーしてしまうので、中古物件でいいのがないか不動産屋に相談してみました。すると不動産屋さんがまさに理想の物件を提案してくれました。

らくたろう「すいません、この物件を買いたいです!」
不動産屋 「ありがとうございます、お売りいたします」

書類など書いてハンコをついて、らくたろうは無事この物件をGETすることができました。

※この事例では、話を簡単にするために住宅ローンを組まずに売り買いをするものとします。

上記は「売買契約」を結んだ時の例です。このときのらくたろうの

「すいません、この物件を買いたいです!」
と自分の意思を表示することを「申込み」といいます。それで、不動産屋さんが
「ありがとうございます、お売りいたします」
と返事をすることを「承諾」って言います。このやり取りがあると「契約」が成立したことになります。
契約
条文でも確認しておきましょう。
改正民法第522条1項
契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。

さあ、らくたろうは無事に契約を済ませてお家をGETすることができました。ここで「債権・債務」の登場です。らくたろうと不動産屋さんはどういった関係に置かれるでしょうか。

※契約の成立は、インターネットの対面でないときやその成立のタイミングなど沢山論点がありますが、この記事では割愛します。ベースである対面での契約についてまずはしっかり押さえましょう。

「申込み」と「承諾」の両方があって契約が成立する
 

売買の債権・債務

さて、らくたろうと不動産屋さんは売買契約を結んだことで、次の図のような関係に置かれます。

関係

らくたろうは購入した物件を引き渡してくれ!不動産屋は物件の代金を支払ってくれ!と請求することができます。

このときの「〇〇してくれ・○○して下さい」と請求できる権利のことを「債権」といいます。別にお金に限った話ではないです。「この日までに納品してください」とか「この日までにお家のカギを渡してください」とかも債権です。

おや、債権しか出てこない、債務はどこに行ったの?と思うのは当然です。先ほどの図は厳密にいうと不足してますので、下のように書き直します。

債権債務の関係

このときの「〇〇しなければならない」義務のことを「債務」といいます。

上の図からわかるように一つの行動に対して債権・債務は必ず一対になります。債権だけ発生し、対になる債務がないなんてことはあり得ません。

買い手の債務⇔売り手の債権
(らくたろうの代金を支払う義務 ⇔不動産屋の代金を払えと請求する権利)
売り手の債務⇔買い手の債権
(不動産屋の物件を引き渡す義務⇔らくたろうの物件を引き渡してと請求する権利)

というワンペアの形になります

例の売買契約を結んだ場合、らくたろうは「購入した物件を引き渡してくれ」と請求できる債権者であるとともに、「購入代金を不動産屋にしはらわないといけない」債務者になります。

一方、不動産屋さんは「購入代金を払ってください」と請求できる債権者になるとともに、「売った物件を引き渡さないといけない」債務者になります。

くどいですが、債権者とは「○○してください」と請求できる権利である債権を持っている人のこと、債務者とは「〇〇しなければならない義務」である債務を持っている人のことです。

このように契約当事者が、双方とも債権者・債務者の立場に置かれる契約のことを「双務契約」とか言います。(売買契約も必ず双務契約になります)

何にも問題がなければ、買手が代金を払って、売り手がお家の引渡し(お家のカギを渡す)をして、おしまいです。しかし、物事がすんなりと運べばいいですが、そうもいかないのが世の常。次の項では、契約がうまく終わらない場合について見ていきます。

債権は「○○してください」と請求できる権利、債務は「〇〇しなければならない」義務。

 

契約がすんなり終わらない場合

契約がすんなり終わらない場合は次のような場合があるでしょうか。
① そもそも買主がお金を払えない、売主が物件を引き渡しできない
② 受け取った物件が、契約内容と違うとき
①のときは債務不履行の問題、②のときは契約不適合責任の問題として扱います。それぞれの流れをしっかり押さえましょう。全体像はこんな感じです。
債務不履行

債務不履行

債務不履行とは、債務者が果たすべき義務(債務)を実行しないことです。ざっくりいえば契約違反・約束破りってことです。義務を果たすべき人(債務者)のせいで約束が守られなかった場合、そりゃあ債務者は責任を負いますよね。

しれっと「履行」って使ってますが、言葉の確認をしておきましょう

履行
債務の内容を実現する行為。「約束を果たすこと」といってもいいでしょう
「不」履行ですから、債務の内容が実現できないってことです。

不履行となった債務の債権者(売主)は債務を不履行にした債務者(買主)に対して次の図のような責任追及ができます。

債務不履行責任

※上の図はカンタンな概要を示したものです。ここは論点が非常に多いため、まずは全体像の理解をするため簡略化しています。

 

契約不適合責任

契約不適合責任
売買契約において、目的物の内容が契約したときの内容よりも不足していたり、不備があった時に、売主が買主に追う責任のこと

不動産売買契約だったら、物件の引渡しを受けた後、「契約内容の土地の面積より、実際の方が小さい!」「屋根裏に欠陥がある!」などがわかった、売主が買主に対して責任を負います。

こういう時は、売主の債務である「物件を引き渡さなければいけない義務」は完結しません。よってこの債務の債権者である買主は、債務者である売主に次のような請求ができます。

契約不適合

ここでは「こういうことができるんだなあ」くらいで覚えておきましょう。代金減額請求は追完請求した後でないとできないなど、場合分けが必要なこともあります。詳しい解説は別の機会で解説します。

 

まとめ

ここでは、売買契約の債権・債務を説明するため、その全体像・概要だけを解説してきました。債務不履行・契約不適合責任に関しては細かな論点が沢山あるので、詳細は別記事で解説していきます。

いずれにせよ、本記事の目的は「債権・債務」とは何かを理解することです。前回の賃貸借から読んでくださっている方の場合、今回の内容は冗長な内容かもしれませんが、「債権・債務」ってなあに?と聞かれて前回・今回のような内容が説明できれば今後の議論は大丈夫でしょう。

民法がニガテな人のほとんどはこの「債権・債務」でつまづくと思います。一度・二度読んだだけで理解できる内容ではないので、苦手な方は繰り返し図を描いて読んで勉強してみてください

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